星組新トップコンビ インタビュー

“はじめての恋”に落ちるスカイとサラに、自然と重なる新星組トップコンビ

——大劇場お披露目公演が『ガイズ&ドールズ』に決まったときの気持ちは?
北翔:私は13年前の月組公演に出演し、この作品の素晴らしさを知っていたのでまたぜひ出たいと思っていました。その夢が実現しとても嬉しかったです。
妃海:私は宝塚のファン時代から大好きな作品でした。まさかその作品に出演できるとは予想もしていなかったので驚きました。「あの場面が好きだったな」とか、当時のトキメキをまた思い出しています。

——北翔さんは2002年の月組公演『ガイズ&ドールズ』では、本公演で三人組のギャンブラーの一人ラスティを、新人公演ではネイサンを演じました。
北翔:本当に楽しい作品で、芸達者な方が多く、とても勉強になりました。何より“スカイ役の紫吹さんがものすごく格好よかった!”という印象があります。当時は新人公演で何度か紫吹さんの役を演じさせていただき、手取り足取り教えてもらいました。全国ツアー公演『大海賊』も偶然紫吹さん主演の作品でしたので、公演が決まったときに紫吹さんにお電話して、「新しい自分たちの作品を創り上げてね」と言っていただき嬉しかったです。   

——スカイ役をどのように演じたいですか?
北翔:賭けっぷりが誰にも負けないような究極のギャンブラーですよね。そんな裏社会で生きる彼が、全く違う世界のサラと恋に落ちる。色んなことを知っているつもりだった彼が、あり得ない恋に落ちてしまうわけです。それがあの「はじめての恋」という名曲にもつながるのですが、曲の素晴らしさと共に、私たち新鮮なカップル(笑)の雰囲気をそのまま出していけたらなと思います。
妃海:CS放送の「タカラヅカ・スカイ・ステージ」などで北翔さんが歌われる「はじめての恋」を聴いていたので、稽古場で初めて目を合わせながら歌ったときは、感動して泣いてしまいそうでした。
北翔:動揺してたよね?(笑)
妃海:はい…本当に嬉しくて。北翔さんの甘い歌声の「はじめての恋」、ぜひ皆さまにもナマで聴いていただきたいです!   

——サラ役については?
妃海:サラは漠然と“かわいい”という印象が強かったのですが、いざ台本を読んでみて、自分の信念を持っているところがすごく素敵だなと思いました。スカイと出会って真剣に恋をして真剣に生きている。そういう何事にも真剣に向かうサラを深めていけたらと思います。
北翔:風ちゃん(妃海)にぴったりだと思うよ。ハキハキして曲がったことを見過ごせないところとか、とてもサラに合っているよね。

——サラがつい酔っぱらってしまうところも印象的ですね。
北翔:そう、あそこはポイントです!
妃海:自分が酔っぱらったらどうなるか、想像を膨らませて演じたいと思います(笑)。とにかく北翔さんがとても格好いいので、まだまだ緊張するのですが、この恋をした状態のまま、もっともっと深めていけたらと思います。
北翔:ありがとう(笑)。全国ツアー公演では舞台上で小道具のハプニングとかも起きたけど、とても機転がきいて臨機応変に対応してくれました。これからもお客様の知らない“妃海 風”を引きだせたらと思うし、色々な力を発揮できる人なので、相手役として何の心配もしていません。
妃海:北翔さんはいつも笑顔で、誰よりもすごくお稽古されて。そんな北翔さんを拝見していると「自分はこんなもんじゃだめ。もっと色々できる!」と思います。こんな素晴らしい方とこういう立場でいさせていただけるのは“奇跡”だと思うので、一分一秒無駄にすることなく、北翔さんから教わることをすべてを吸収していきたいです。   

男役の格好よさ、迫力あるナンバーが満載の作品を“新作”として届ける

——実際お稽古が始まりましたが、どんな感触がありますか?
北翔:今の星組は面白い役者が揃っていて、今回の配役もぴったりだなと思います。紅さんのネイサンもそうだし、アデレイドもね。アデレイド役の礼さんは風ちゃんの同期だよね。
妃海:普段は男役の礼さんが、稽古場で同じようにスカートをはいて隣に並んでいると不思議な感じがします。同期ならではの何かがあるのか、とてもお芝居しやすいです。   

——この作品は1950年にブロードウェイで初演されたミュージカル・コメディで、1948年頃のニューヨークが舞台です。スカイとサラ、ネイサンとアデレイドという二組のカップルが登場しますね。
北翔:あの時代だからこういう作品ができたのかなと思います。
妃海:私は映画版「ガイズ&ドールズ」をDVDでも観ましたが、アメリカ的な勢いのある、明るく楽しいラストシーンにびっくりしました!
北翔:「え!?」と驚くよね。まあどの時代も“女によって男は変えられる”ということなのだと思う! 純粋に恋に落ちるスカイとサラ、14年も婚約したままズルズルと過ごしているネイサンとアデレイドという二組のカップルが対照的で、そこにまた作品の面白さがあるよね。   

——宝塚歌劇の舞台では、今回3度目の上演となりますが、何か新しい『ガイズ&ドールズ』になりそうですか?
北翔:キャストが変わるとやはり作品の見え方が変わりますし、セットも今回新しくなります。それに振付が変わるので、プロローグから新鮮な『ガイズ&ドールズ』をお見せできるはずです。

——たくさんのナンバーがありますが、なかでも「運命よ、今夜は女神らしく」は大きな見せ場ですね。
北翔:スカイにとってはメインの場面のひとつです。でもあのシーンは、ダンスのイメージが強いと思うのですが、ナンバーの面白さは歌詞にもあるんですよ。“運命の女神さま、どうかお願いします”と手を合わせているような気持ちと、“他のやつに色目を使わないで自分にきてくれよな!”という強気な部分と。女神との駆け引きの歌なんです。そういうところもきちんと表現できたらと思います。
妃海:北翔さんは稽古場でもスーツ姿で、先日着ていらっしゃった白のスーツも素敵でした。お芝居されているときはもちろん、ただ座って台本を読まれているだけでも格好いいんです。
北翔:そんなところまで見てるの!?(笑)
妃海:ハイ。一つひとつのしぐさ、帽子の使い方や、ジャケットの裾をパッとはらうときなど、“これはファンなら巻き戻して見る!”というような、宝塚の男役さんならではの格好いいしぐさが満載です。近くで見ることができて本当に幸せです。
北翔:スーツにソフト帽というスタイルの見せ方は、当時、紫吹さんから徹底的に教えていただきました。帽子もただ投げるだけではまっすぐ飛ばないので、そのコツとかね。ポケットに手を入れるのも、すっきり見せるポイントがあって。あのとき細かいことを先輩から伝授してもらえて本当によかったです。   

——宝塚歌劇ならではの『ガイズ&ドールズ』、そして今の星組ならではの魅力が溢れる舞台となりそうですね。
北翔:1984年に大地真央さん、黒木瞳さんを中心とした月組による初演のときに、酒井澄夫先生が宝塚レビューの要素も取り入れてこの作品を創られたそうです。そして今回は演出も多少変わりますので、今回の新しい『ガイズ&ドールズ』をきちんとお見せするという気持ちでお届けしたいです。

——稽古場での様子や雰囲気はどうですか?
北翔:星組は、専科時代に出演したときに、妥協しないガッツのある組だなと感じました。そのエネルギッシュなカラーが受け継がれていて、私もその波に安心して乗せてもらっています。
妃海:とても笑顔の多い、みんなが生き生きしている稽古場だなと思います。北翔さんが醸し出される空気はお日様が射したようで…。北翔さんは下級生まで全員に声をかけられ、気にかけて下さるので、余計にもっともっと自分の役を楽しみながら深めていけているように思います。
北翔:コメディなので、自然とハッピーな雰囲気になるよね。稽古場ではみんなに毎日色んなことに挑戦してもらいたいし、それぞれの個性を引きだしてあげられるような共演者でありたいです。

——では最後に、作品への抱負を改めてお願いします。
妃海:とても楽しい作品ですし、男役さんの色気や格好よさを堪能できる宝塚らしい舞台だと思います。ぜひ多くの方に観ていただき、ハッピーな気持ちになっていただきたいと思います。
北翔:新生星組77名に、専科より私の同期の美城れんさんを迎えてお届けする作品です。個性豊かに一人ひとりが輝けたらと思います。また「あの人のこの役も面白い」というような発見の多い作品です。ぜひ何度も観たくなるような舞台を、この星組で創り上げますので楽しみにしていてください。